×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


◎さわむらくん


にこにこと笑顔の澤村くん、部活はないの、尋ねれば、今日は休みと言われてしまう。何故がリア充であるはずの澤村くん、の彼女にされて早1ヶ月、私もリア充の仲間入りをしてしまって1ヶ月でもある。望んでない。
確かに彼氏欲しいなあとか、かっこいい彼氏がいいなあとかあわよくば誰彼が2次元から現れないかなあとか言っていたけど、目の前の澤村くんは別にお呼びではなかったはずだ。友人とカラオケに行ってアニソンを歌うとか、友人とアニメイトに行ってグッズを手にキャアキャア言うとか、友人とスカイプしながら実況するとか、そういう日々で私も十分に充実していたはずである。
その日常を壊したのがこのバレーボール部部長澤村!この野郎!よくも!
私の携帯電話の待ち受けは推しキャラクター一択で、この彼氏面いや一応彼氏なんだけど、この男の写真に変わることはまずない、というか撮らない。メモリが勿体無いではないか?私の携帯電話のメモリの必要最低限以外は全て推しのためのものなのだ。そう、今日だって家に帰って昨日の深夜に録画されたであろう今期のアニメを見るはずだったのだ、そして友人と語らおうと……。
友人達は先程の別れ際、ドナられる私を見て痛ましそうに見送っただけ、グループラインに帰宅の旨が通知されていく。待って、私のためにアニメ鑑賞はもう少し、この悪魔のバレー部長から逃げ出したらすぐにでも、
ウェイトレスのお姉さんがメニュー表と共に水を置いた。やめろ私は今すぐにこのダンジョンから脱出をはからねばならぬ。
「は、話があるなら早くして、わ、わた、私、用事……あるから」
「どんな?」
やめろ聞くんじゃねえ手前は本当に悪魔か。
アニメ見るんだよ!さっきから用事あるって言ってんだろ!聞きわけろ!用事と俺どっちが大事なのみたいな顔をするんじゃねえ!アニメ即答だわ!はよしてくれ!友人達を待たせてるんだよ!今日は友人の旦那が活躍するって予告で言ってたから友人の夢語りをみんなでワイワイキャアキャア聞くんだよ!!!察しろ!!!!!
「な、なんでもいいじゃん、か、関係ない……でしょ……」
イライラしてきた、くそ、他人に割くこの時間が勿体無い、家に帰りたい。家に帰りたい。
「私、澤村くんをい、一番に、み、れない、から……ご、ごめんなさい、でも、嫌だったら別れて、いいから……ごめんなさい!」
頭を下げて立ち上がる。このままの勢いだ!目指すはファミレスの出口、颯爽とその場を立ち去る私!友人達よ!待たせたな!今帰るぞ!
ファミレスを出て勢いもそのままに家へと走る。肥えている私にとってこの運動はあまりにも辛いが、推し、嫁、旦那達が動き喋るアニメが待っているとなれば精神的には高揚する。手にしている携帯電話をそのまま操作し、友人へ悪魔を振り切ってやった旨を伝えようと悪魔、まで打ち終えたところでハッとした。自分の重たい足音ではない、軽やかな足音が聞こえる。振り向いた。見なかった事にした。やべえ。野郎、追いかけてくる。
自然と家路から逸れ、学校への道を走る。怖い。追いつかれる。デブには辛い。無理。ストーカーに追われる女の子の気分がわかってしまった。ブスだからこんなの縁遠いと思ってた。そう、澤村くんは運動部なのだ……。


このあと捕まる




11/05 19:21


mae top tugi