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◎番犬


大きなクマのぬいぐるみ、寝転んでもまだまだ余る大きなベッド、小さなぬいぐるみやロボットなどが幾つかと、天井から下がる戦闘機の模型。私の好みがわからないからと色んなものを買ってくれた結果だ。
クローゼットには自分の服が数着あり、帽子と靴も揃えられて置いてある。隣のドアから寝室を出ると、小さな廊下、目の前にはバスルーム、横にはリビングのドアがある。
リビングのドアを開き、誰もいない事に少しだけ落胆する。玄関にある背伸びしたスニーカーと、自分より遥かに大きな革靴が、まだまだ綺麗な事が更に気分を落ち込ませた。玄関を開け、外に置いてある箱を引き寄せる。まだ温かいこれが、今日の朝ごはんであり、昼のお弁当である。夜にもう一度、晩ごはんが届けられ、その時に纏めて払うのが我が家の通例だ。
私の身長では、キッチンでの作業が少しばかり危険だという義父の配慮でもあった。
箱を開け、中にある紙パックを取り出し、開ける。これを食べたら、お弁当を詰めたカバンを背負って学校へ。
テレビをつける。どこもかしこも、義父の話で持ちきりだった。今はどこにいるのか、次はいつ帰ってくるのか。私は何も知らない。義父は何も教えてくれない。私を危険から遠ざけるためだと、わかってはいるけれど。
ピアース。それが私の、新しい苗字だ。……名乗らせては貰えないが。
「……あいたいなあ」
前回はいつ帰ってきたのだったか。久しぶりに声を聞いて、ぎゅっと抱きしめてもらいたい。そう、さみしい、のだ。
ソファに置かれた猫のぬいぐるみの頭を小突く。これは隠しカメラがある。気付いたのは最近だ。
たぶん、ほかにもきっとある。心配性の義父らしい対処法だと思っている。
「はやく帰ってきてね、おとーさん」


08/13 13:59


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