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◎血界戦線


×創作

世界は何でも起こる。そう言ったのは顔に傷のある男だった。見渡す限り、異形の生き物ばかりが行き交う大きな街。自分の知っていた場所とはまるで違う様相の大都市。霧に包まれ隔離された元ニューヨーク。この街に住む、その人が街の名前も教えてくれた。ここはヘルサレムズ・ロット。異界と現世が交わる場所。

「……皮肉な名前」
一通りの話を聞き、漏らした言葉はそれだった。興味が薄いのか、表情もあまり変わらない。
一応は応接用にと置いてあるソファに一人座るその少年は、我々ライブラの一員であり、最近では血界の眷属との戦闘において必要不可欠となったレオナルド・ウォッチを、危機から颯爽と救い上げた人物だ。
その時に漏らしたレオナルド・ウォッチの言葉に引っかかりを覚えた我らがリーダーの判断で、お礼も兼ねて事務所へとご招待した次第である。
「それで?」
少年が両手を組み、足を組み変えて話を促す。優雅で慣れた所作だ。子どもには似つかわしくないその態度は、しかし、物静かな彼には不思議ととても嵌っている。
「我々の仲間が君の事を不思議なオーラだと言っていてね」
「スピリチュアリズムとか、占いはお断り」
「いや、そうじゃない。最後まで聞いてくれ」
「最後まで聞いて、俺に利点はある?」
「……多勢に無勢だ、大人しくしていてくれないか」
ふっと息を吐いた。呆れたという表情をつくる。
さらさらとした短めの黒い髪、スッと引かれた細い眉、気怠げで瞼に少し隠れた瞳も黒い。鼻筋も美しく、唇は厚め。右目の下の泣きぼくろが印象的な、美しい造形の東洋の少年。
無駄のない動作でソファを立つと、その周りに控えるメンバーに緊張が走る。
「申し訳ないけど、それじゃあ俺を押さえつけられない。ニューヨークの事を教えてくれた事には感謝するけれど、名前も知らない人達の話を聞いてあげられるほどのお人好しでもないし、俺も暇じゃないんだ」
失礼するよ、とソファの横に置いていたリックを持ち上げる。
「待ってくれ」
すっと隣から一歩前に出たのは、少年をここへ連れて来るように言った我らがリーダー。
「君には大変失礼な事をした。私の名前はクラウス・V・ラインヘルツ。世界の均衡を保つことを目的とした組織、ライブラのリーダーを務めている」
少年はその重そうなリュックを背負い、クラウスを熟視する。退屈そうな表情は変わる事は遂になかった。
「……アズマ・タケミヤ。科学に少し興味があるだけの、一般的な日本人だよ」


漢字にすると武宮雷。15歳。
ヘルサレムズ・ロットって、地獄と聖地と製品単位合わせた凄い皮肉な名前だと思うんですよね。


05/03 02:35


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