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13.


「ケチんなよ。俺の金で買ったんだし」

「だったら食べればいいだろ!」

5個パックの最後の1個。

「なんであの女はよくて、俺はダメなわけ?」

「女の子だもん!女の子は大切にするべきなの。…てか、本人の前ではお姉さんって呼んで、背後ではあの女呼びかよ。最低だな」

「っせぇな、」

尖った犬歯が干し柿に緩く突き刺さる。

パーツの一つ一つですら整っているのに妙に残念なところがあるんだよな、真木って。いや、性格残念系イケメンってあるが、こいつの場合は性格最悪系イケメンだ。世の害虫だ。

「…またポメって呼ばれた」

「あ?」

「いや、なんでもない」

あーあ、俺も真木みたいな顔だったらな。

そう思って顔を顰めていると、不意に陰が差した。見れば真木が先程より近い位置に立っていて、俺を見下ろしている。それで陰ができた。

細い小道にはさっきいなかった通行人がぽつりぽつりといて、皆無関心に歩いている。だが、いくら無関心と言っても人の目があるのに、しかも、真木は人の目を引くのに、妙に頭のネジがぶっ飛んだこいつは暴挙に出やがった。

俺の頬に手を添えて、僅かに顔を上げさせ、

「え」

自分は僅かに腰を折って、

「真木、…ん、」

干し柿を俺にくわえさせたのだ。

真木の口の中に入ったわけじゃない。噛んだり、舐めたりしていない。端を咥えて俺に渡したのだから、唇同士が触れてもいない。

だが、それでも衝撃的で、通りすがりの主婦が頬を染めるのを視界の端で見て、やっとこれが現実なのだと我に返った。真木は干し柿を指先で押して、俺の口に無理矢理入れた。

ほんわりと広がる、甘くて優しい味。

真木の顔がいつもよりずっと近かった。

「あの女で、んな顔すんじゃねぇよ」

「ふが?んっご、…む、」

干し柿が大きすぎて、うまく噛めず、飲み込めない。それを見て真木は意地悪く片方の口角だけ吊り上げて悪役顔負けの笑みを浮かべると、俺の膨らんだ両頬を強く圧迫しやがった。

「んぐぅえ…!!」

「お前に情ねぇ顔させていいのは俺だけだ。お前を拾ったのは俺だから所有権は俺にあって、俺が飼い主だろ?…そうだよな、はっぱ?」

「はっぱじゃな、…んっきゅぅ、」

てか、飼い主って頭おかしいのかよ。

なのに、頬を圧迫する手を離してくれないから抗議もできなくて、睨むしかできない。残念ながら手は片手が買い物袋を持っていて、もう片手が空のパックを持っているから動かせない。

少ししてやっと手を話してくれて、だが、その瞬間に呟かれた言葉の声色は聞き間違いかと思うほどに優しくて穏やかなものだった。

「干し柿なら近くのコンビニでまた買える」

だなんて色気の欠片もない言葉。

だけど、この男が言うだけで、この声で呟くだけでどうしようもなく魅力的になるんだ。

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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。