もうすごい図である。
干し柿パックを高く掲げた俺、マスクを若干ズラして干し柿を食べる口裂け女、その口裂け女をナンパしながら干し柿を食べる壮絶美形。
唯一の幸いに通行人がいなかったが、いればいたで都市伝説が見えないタイプの人だったら、真木が俺をナンパしていると見えてしまう。それだけは絶対に嫌だ、死んでも嫌だ。
いや、死んでるんだけど。
というか、
(綺麗って言ったよ、真木!)
口裂け女に言っちゃダメな言葉、第1位。
(で、出た、出ちゃったよ…!)
俺の心境とは裏腹に、真木は干し柿を齧る。たまに見える白くて鋭い犬歯とか、真っ赤な舌とか、たかが干し柿のくせに食べ方エロい。
それを見ていたら心配がドキドキのワクワクに変わっていった。世の女の子の敵である男は女の子に裂かれてしまえばいい、と綺麗と言ったのが自分じゃないから俺は楽しく観戦だ。
だが、顔面偏差値という言葉がある。
それで言うと真木は間違いなく3桁に突入する勢いで、…まさかの差別が誕生した。
『まぁ、嬉しいわぁ』
「いや、そこは殺(や)れよ!!」
『引っ込んでな、ポメ』
「…………もうやだ」
俺の時と態度が違う。
都市伝説として疑問に思うほど違う。
ペットを見るような目ではなく、アイドルを見るような熱い眼差しで真木を見詰める口裂け女。因みにまだ干し柿を食べている。
「お姉さん、綺麗な顔を見せてくれないの?」
『あ、あら、積極的ね、最近の子は』
「見せてザックリ殺っちゃいなよ!そういう噂だったじゃん!顔面偏差値が理由の特別扱いなんてフェアじゃない!…てか、真木、お前がは女の子の前だけキャラ変えるな馬鹿!!」
『お座り、ポメ』
「…………ぐすん」
世の中って不公平だ。
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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。