「は!?おま、っえ!?何して…」
「何って、キス」
「そうじゃなくて!!」
キスした理由だよ!
と叫ぼうとしたところで自分の目が見開いていくのを感じた。真木は都市伝説系はまだしも、幽霊系には触れられなくて、だが、今のキスにはしっかりと感触があってまだ残っている。
唇に触れればそこにはまだ温度が残っているようで、これが現実だと告げていた。
呆然として目を限界まで見開く俺を真木は馬鹿にしたように笑って、手を伸ばしてくる。普通ならそこで頭を撫でたりするが、この大魔王様は容赦なく頬を思いっきり摘みやがった。
「いっへぇ、んぁあ?」
「間抜けなツラしてたからな」
「うるはいひゃ、ほまっ!」
「あー、聞き取れねぇなぁ?」
と騒ぐが、やはり頬は摘まれたままで。
僅かな痛みも真木の指の感触もあるわけで。
俺は唖然として真木を見上げた。だって、真木の体をすり抜けたことなんて何度だってあったんだから。不思議そうにする俺に、おつむが弱いとでも言いたげに真木が教えてくれた。
「ちょっとした特殊能力?」
「なんで疑問形?」
「俺も分かんねぇから。文句あっか?」
「……ないです」
そこでやっと指を離してくれた。
「お前は死んでて、俺は生きてる。生きてる力は俺にしかなくて、キスで移すとお前が一定時間だけ実体を持てるようになる。…要は物質に触れられて、普通の人間も見えるんだ」
「え、何その少女漫画設定」
「うっせぇ」
「キス?絶対にキスなの?他の方法とかは?」
実体を持てるようになるのは嬉しい。一般の人間にも見えるなら実体アリの透明人間みたいなセクハラは無理だが、それでも妙に得した気がする。しかも、この状態でも幽霊が見える。
あ、台所のアサリが水を噴き出した。
「ねぇよ。俺だって他の方法がいい。カメハメウェーブでお前に送り込むとか」
「…いや、やっぱりキスでいいかな」
命が惜しい。いや、確かに死んでるけど。
そうじゃなくて、真木のカメハメウェーブなんて自然の摂理で死亡を迎えるどころか、輪廻の輪すらも超えて魂ごと消滅しそうだ。
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座右の銘:リア充爆発しろ。
現世への未練:イケメン滅ぼす。