3月16日 | ナノ
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In the early summer(初夏の頃)


あれから3年が経った。

俺は無事に4年生に進級した。

結局、滝内への想いは受験という不安な時期に生まれた気持ちの副産物なのか、それとも本気で好きだったのか、俺は分からなかった。

ただ一つ言えるのはこの3年間、俺は誰にも心を動かさなかった。告白されたことはあった。だが、その度に滝内が瞼の裏に浮かんで、告白を受け入れることなんて俺にはできなかった。

あの気持ちが副産物にしろ、本気にしろ、もう叶うことはないのだから諦めればいいのに。

頭では分かっている。

なのに、踏み出せない自分が嫌になる。

なら、今も好きか。

これも分からない。

あの頃みたいに心臓が爆発するんじゃないかと思うほど高鳴ることもないし、滝内を思い出しても気持ちが疼くこともない。あの恋はもう過去なんだな、ってはっきり割り切ってる。

だが、再会したらどうなるか、確証はない。

で、今、俺は、

「はぁ…、絶対会うだろうな」

複雑な気持ちで母校の校門の前にいた。

教育学部の4年生が迎える教育実習。高校の教師を志望している俺は当たり前に母校に帰ってきて、しかも、英語を担当することになった。

滝内にどんな顔をして会えばいいのか、いや、何も起こっていないんだから普通に元教え子とか滝内の言うような友達の顔をすればいいが、それでも心では緊張して随分と不安になる。

唯一の幸いといえば、俺の担当となる先生はあの時に産休を取っていた当時のクラス担任、八長友理子(はちなが・ゆりこ)先生だ。

教育実習の交渉をする時に最初に連絡したのも、事前の講習や指導をしてくれたのも八長先生だったのだ。だから、実は何度か母校に出入りしたが、まだ滝内には会っていない。

だが、今日から3週間。

滝内に会わないわけがない。

「失礼します」

校門から入って、見慣れた懐かしい廊下を進んだ先に高等部の職員室がある。

ノックをしてドアを開ければ、少し奥の窓際のところに八長先生が座っていた。俺の声に資料でぎっしり埋まった棚のから顔を覗かせる。

[ 14/21 ]
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時が経ち、記憶が薄れ、
俺はついにあの頃に向き合う決意をした。