3月16日 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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7.


「お、高野。迎えに来てくれたのか?」

滝内は意外と近くまで来ていた。

駅から来る途中、店から交差点二つ離れた公園沿いの道にいた。3月半ばの盛りの桜が白い街灯に照らされて、淡く儚く光っていた。

初めて見る私服の滝内はひどく新鮮で、スーツ姿に比べるとさらに年が近くなったようだ。

白いVネックのシャツにダークグレーのカーディガン。少しまくり上げられた手首の色が白い割にはかなり骨張った成人男性の手で、上品なベルトの時計がとても似合っていた。

細身のデニムを着こなす姿はスーツの時よりも脚が長く見えて、モデルみたいだった。

ひらり、と桜が舞い降りて滝内のカーディガンに引っかかる。自分では見えにくいところなのをいいことに、俺がそれを取った。

「引っかかってる」

「ありがと」

薄紅色の桜の花びらが舞い降りる。

こっち、と案内すれば滝内が着いてくる。二人っきりの時間も交差点二つ分しかなくて、しかも、憎たらしいことに信号は二つ連続して青。

短い時間でも何か話したくてたまらないのに、頭の中にいろんな考えがグルグル巡るばかりで口は一向に開きそうもない。結局、滝内が軽い会話を振って沈黙を破ってくれた。

全員集まれずに残念、とか。

酒とか煙草はダメだ、とか。

そんなありきたりな会話。

だが、店に着くまでのたった数分でも、ありきたりな会話でも嬉しくて、鼓動が速くなって、今日を最後に滝内にあえなくなるかもしれないと思うとギュッと胸が締め付けられる。

会話はそんなに弾まなかった。だって、これだけの距離しかないんだから仕方ない。

そして、滝内が部屋に入って、騒ぎながら料理を食べたり談笑したりする。滝内の隣に行って話したかったが、告白で緊張していた俺は動けず、いつもの友達達の近くにいた。

滝内は教師として気を遣っているようで、いろんな人のところに移動したりしていた。俺達のところにも来たが、会話が二人っきりじゃなかったから緊張はバレていないと思う。

で、そろそろ切り上げる時間で。

会計を終えた後に皆で店を出た。二次会に行くやつらと別れを告げて、帰宅する皆はそれぞれが使う駅へと向かっていく。偶然にも滝内は俺と同じ駅で、二人で並んで歩いた。

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時が経ち、記憶が薄れ、
俺はついにあの頃に向き合う決意をした。