『君を愛する。君の髪が真っ白になっても、年老いて動けなくなっても愛すると誓う』
揺るぎない強い瞳。
未来を無視しているわけじゃない。未来を認めた上で、進もうとしているんだ。
『世界で一番愛するし、君に後悔なんてさせない。一緒に年を取ることはできないけど、その代わり君に寂しいと感じさせないさ』
「私も君と生きていきたいな」
この言葉の意味を、きっと彼は知らない。私がこの一言に込めた覚悟と決意も。
彼はもう一度私を見上げた後、翼を広げる。私の背後に回ったかと思うと、次の瞬間には人間の腕が回ってきて私の首に腕を回す。腕の位置からして彼は膝立ちだをしていると思う。
(私に緊張した顔を見られたくないとか)
ありえる。
だって、耳朶にかかる吐息の震えからして、既にドラゴンが緊張していることが分かる。
彼は私に甘えて擦り寄ってくる。首筋にかかる髪や吐息が擽ったい。だが、息を整えて契約を申し込もうとしているところに悪いが、今まで散々振り回してくれた報復をすることにした。
すぐ隣にいる彼に甘く囁いた。
「知ってるかい。私達人間の常識では、プロポーズはきちんと顔を見てするものだ」
「っ!?」
ビク、と肩が跳ねたのが伝わった。
だが、手加減はしてやらない。
「顔を見ないと断られる」
「…それは嫌だな」
苦々しく呟いて、ドラゴンが腕を離す。彼が離れていくのは残念だが、きちんと見詰めて契約できるならそれはとても幸せだ。
彼はベッドから床に降り、そして、なんと、
「ちょ、待って、どこからそんな知識を入れてきたんだい!?そこまでしなくても…!」
私の前に片膝を着いた。
もはや本当に求婚で、顔が急速に熱くなっていく。視線を逸らしたいのに彼の強い眼差しと、先程の自分の言葉で逸らせない。耳やら首筋やらまで熱くなって、きっと赤くなっている。
廃れた洋館の一部屋。何もない殺風景な部屋なのに、ときめきが止まらない。
「ごめん、指輪は用意してないんだ…」
「そこまでは要求してないだろう!何を勘違いしているんだ!求婚じゃなくて契約!」
「いや、でも、カルナダを貰うんだから」
「貰うって恥ずかしいからやめてくれ!私はもうバツイチ子持ちなんだぞ…!二人も!」
「君は出会った頃から何も変わらないさ」
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孤独が怖い、と君が怯えるのなら、
私は君と最期まで寄り添うと誓おう。