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9.


銀色の小さなボールが反射した淡い光をホイールに落とし、勢いを失いながら回っていく。投げ入れられた頃のスピードは既に失われていて、あと三周もすれば止まってしまいそうだ。

全員が固唾を呑みながら見守って、また一周。緩やかにゆっくりともう一周した。

緑の0、黒の26、赤の3を通り過ぎていく。今すぐに止まりそうな気配ではないが、この一周が最後だろうことは見て取れた。

黒の24、赤の5、黒の10。ホイールの半分を過ぎた。もう今にも止まりそうだ。

そして、黒の6、赤の34、黒の17。ホイールの四分の三を通過したばかりの時、ボールはついに勢いを失った。落ちそうで、だが、まだ落なくて緊張で鼓動の音さえ聞こえる気がした。

黒の4。

緑の0まであと四つだ。そこまで届くのだろうか。ここで落ちても不思議じゃない。ディーラーは瞬きすらせずに釘付けになっていた。

赤の19。

あと三つだ。運命の女神が俺達に微笑むのか、それとも背を向けるのか、数秒のうちにその答えが得られるだろう。長く走った後のように口の中が乾ききっていて、唇がカサついていた。

黒の15。

あと二つ。播磨の口角が震えていた。それは痙攣のように、何度も続いては焦燥と不安を露にしていた。押したのか、押していないのか、どちらにしろここまでくれば播磨が打てる手はもうなかった。

赤の32。

緑の0はもう隣にある。緊張した雰囲気こそ浮かべていないものの、煙草の先の灰が溜まっているあたり慧も余裕がないんだろう。まだ先の長い煙草を灰皿に擦りつけて捨てたことも、その間眼差しはボールから外さなかったことも緊張している証拠だ。

そして、緑の0。

ボールが、止まった。

だが、最後の慣性がまだボールを動かす。黒の26。播磨の表情が和らぐ。それに比例して自分の表情が硬直していく自覚はあった。

ボールはついに静止して落ちた。緑の0と黒の26の間。ちょうどその真ん中で静止したボールが全員の眼差しを奪いながら落ちたポケットは、

「っしゃあ!!」

緑の0だった。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。