さぁ、どうする、播磨。
慧の勝率は2.7%。つまり、負けて2億4,800万が泡となって消える確率は97.3%。
カジノが勝つ確率の方が圧倒的に高いが、万が一2.7%が現実になってしまった場合、36倍の配当により89億2,800万となる。
最初の5,000万がこんな頭の痛くなるような数字になるだなんて、播磨は予想していただろうか。
確かにこれが現実となる確率は低い。だが、この数字は2.7%という僅かな確率を恐怖に変えるには充分すぎる威力を持っているだろう。
コロコロ、コロコロ、とボールが転がる。ほんの僅かだが、それは確かに減速していった。播磨の表情は強張ったまま、ポケットに入れている手が震えているのが布の上からでもはっきり分かった。
(押してしまえばいい)
もともと外れる可能性が97.3%もあるんだから、それをイカサマで100%にしたところで当然の結果なんだから誰も怪しまないし、バレない。
ごく自然に勝てるんだ。
これ以上いい話はないはずだ。
ボールが徐々に勢いを失って、明らかに減速していく。播磨が押したかどうかは分からないが、手がポケットの外へと出された。音も振動も、判断材料はなにもなくて、ただ面持ちは硬いままだった。
(…え?)
正直に言えば、俺も少し焦っていた。
押したか押していないか、何かしら判断材料があるだろうと高を括っていたからだ。
これじゃあ何も分からない。播磨が誘惑に耐えきれずに押したのか、それとも、最後の最後で良心と真面目さが勝って確率に任せることにしたのか。
できることは全てした。だが、もしも、播磨がボタンの押していないと言うのならこの勝負は俺達に圧倒的に不利で、奇跡なんて望めないだろう。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。