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5.※流血&死亡


無我夢中で走った。

出口まで果てしなく遠いように感じた。その途中で俺を捕まえようとしたり、殺そうとする組織の奴らもいたが、少ないから俺でも対処できた。

大丈夫だ、伊瀬はきっと大丈夫。

だって、あれだけ強いんだから。

警察が向かう頃にはきっと全てが終わっていて、遅かったなって、こんなの僕の相手じゃないって、仕事が終わったから食べに行こうって、いつもの笑顔で俺に言ってくれるんだ。

そう信じていたのに。

俺は外にいる警察にメモリーを投げ渡すと、全力疾走してきたその足で戻った。

警察が俺の後ろに続く。ここからは警察の仕事だ、外にいなさい、と制止する声が聞こえたが、そんなものに従うつもりは毛頭なかった。

だが、息も絶え絶えに戻れば、

『伊瀬!』

力なく横たわる彼がいた。

体の下には真っ赤な血が広がっていて、その量は一目で致死量だと分かるほどに夥しい。

むせ返る鉄錆の臭い。カーキ色のコートの腹部と胸部は元の色が分からなくなるほどに血を吸っていて、だが、血はまだ酸化していなかった。

『おい、伊瀬ッ!!』

触れればまだ温かい。

だが、確実に事切れた後だった。

息も脈もなくて、開いたままの綺麗な目が俺を映すことは決してなかった。抱き締めた彼が優しく微笑んでくれることはなかった。

血も体も温かい。俺がいなくなったこの数分のうちに、伊瀬はいなくなってしまった。死んでしまった。殺されてしまったんだ。

窓の外では粉雪が土砂降りの雨に変わった。

雨になったばかりの雪は凍えて、コンクリートを打ち付ける音が煩くて、伊瀬が冷たくならないようにぎゅっと強く抱き締めたのに、腕の中で体温が消えていくのが伝わってくる。

伊瀬が生きていた証が、消えていく。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。