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3.


『ふふっ、なんていうか…、君の素直じゃないとこ、僕の弟にそっくりなんだよ』

『弟がいるのか?』

『四つ下に一人だけ。可愛くてね、大学時代は経営を専攻してて、首席を取ったとか分かりにくく自慢してくる割には褒めたらすごく喜ぶの。わんちゃんみたいに懐いてくる』

『自分の弟を犬って言う兄貴がどこにいる』

『え、ここ?』

伊瀬は本当によく笑う。

だが、そうだとしても弟の話をしていた時はいつもより幸せそうに笑っていた。弟がいることは初耳だったし、伊瀬がこんなにも柔らかく穏やかに微笑んでいるのも初めて見たんだ。

忙しくて伊瀬はあまり実家に帰れないし、情報屋という特殊な仕事のため安全を考慮してあまり帰らない。それでも伊瀬は弟を大切にしている、と俺にも容易く分かった。

『いつか皓に会わせたいな。きっと気が合う。いや、皓はちょっと猫っぽいかも?』

『おい、猫っぽいってなんだ』

『シャーって威嚇しちゃダメだよ?』

『誰がするか!!』

伊瀬がそこまで大事にしている弟だったら、俺も会ってみたいと思っていた。

だが、その日に伊瀬は死んだ。

仕事の最後の最後で、あと一歩で無事に終わるというのに俺のくだらないミスのせいであっさりと死んだ。俺の代わりに殺された。

粉雪の降りしきる日、どんよりとした空の下、伊瀬が寒そうにしながらも柔らかく目を細めて、通り過ぎていく店を眺め見る。仕事の前だっていうのに、ひどく締まりのない微笑みで。

『あの子、もうすぐ誕生日なんだ。何をプレゼントしたら喜んでくれるのかな?』

1月21日、伊瀬の命日。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。