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2.


『次は恋人連れてくるんだろうなぁ…。うちの皓を任せられる子がいいなぁ』

『親父くさいこと言うなよ』

『皓はどんなこがタイプ?』

『いやいや、俺より先にお前が恋人探せよ。もう三十路超えたんだぞ。そろそろ結婚とか視野に入れないと。現実から目を逸らすな』

ひどい、と伊瀬が苦笑いする。

俺はこう言ったが、実は伊瀬はとてもモテる。出会ったあの頃だって学校中の生徒が窓から伊瀬を見詰めていたし、さりげない仕草の一つだって伊瀬がやれば魅力的に見えてしかたない。

今だって擦れ違う人の多くが足を止めて伊瀬を見詰める。少し照れたような熱っぽい目で。

外見だけでなく性格もよかったが、それでも伊瀬が恋人を作らなかったのは、単純に情報屋の仕事に明け暮れていたからだろう。

彼は本当にこの仕事を誇りに思っていた。

『で、タイプは?』

『タイプっていうか、んー、嘘も建前もなくて本音で話せる人がいいかな』

情報屋は自分を嘘で塗り固める。

それが情報屋が情報屋でいられる条件だし、自衛の術でもある。だが、それを全て捨てて本当の自分を見せることができて、本当の相手を教えてくれる人を好きになりたいと思ってる。

そう答えれば伊瀬は少し驚いたようだったが、満足のいく答えだったらしい。

『だったら皓はもっと素直にならなきゃだね』

『はぁ?素直?』

『好きなら好き、嫌いなら嫌い、怖いなら助けてってちゃんと言うんだよ。君にはそれができていない。演技ばかりが上手くなって、君は君自身を他人に伝えることがひどく下手だ』

『…うるさい』

『君が本心を言わないと相手も本心を見せてくれないよ。だって、フェアじゃない』

伊瀬がまた柔らかく微笑む。

『恋人ができたら素直になってごらん。大丈夫、君が好きになった人だ。きっと君を受け入れてくれるって僕が断言するよ』

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。