奥のしこりを強く抉られる。
その度に背筋がしなって、唇がわななく。
潤んだ目で慧を見ればそこには快楽に耐える顔があって、俺と目が合うと綻ぶように微笑んで首筋に触れるだけのキスをしてくれた。
なのに、幸せそうに細まる眼差しとは裏腹に奥にはやはり悲しそうな光があって、慧が何かを考えているのは明白だった。俺を抱いているのに、別のことを考えて集中していない。
だが、咎める余裕は俺にはなかった。
「は、ァん、…ぐ、りぐり、しすぎ!」
そして、一際強く押し潰されて、
「ぁあッ、くぅ…!」
意識が一瞬飛んだ気さえする。
気が付けば敏感な奥で液体が勢いよく弾けた衝撃で、俺も達してしまっていた。
はぁはぁ、と肩で息をしながら荒い息を必死に整えた。真っ白になった思考は衝撃から立ち直れずに快感に痺れたままだ。酷使した腰は本格的に力が入らず、ぐったりしている。
ぴたり、と慧と腹同士がくっつく。汗ばんだその感覚が今はとても心地よかった。
あぁ、もう力が入らないし、眠い。
意識が闇に引きずり込まれそうだ。
「…お前の恋人は俺だよな?」
意識が沈む直前に聞こえた声。
長らく一人で慰めていた性欲を恋人に解消してもらって、睡眠欲に溺れそうになっている今、本能のうちの二つの大きな欲求を満たせば、人間というものは良くも悪く素直になるらしい。
普段なら駆け引きや振る舞い方を考えるだろうが、今の俺にそんな余裕はなかった。
「お前だ。慧だけを愛してる、ずっと」
無意識のうちにそう口走っていた。
いや、無意識だからこそ本音だった。
そして、一瞬淡い茶色の目を丸めた後に花が綻ぶように幸せそうに微笑んだ慧に気付くことなく、俺は疲れて眠り込んでしまった。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。