先程まであんなに乱暴に犯してきたのが嘘だったように、今度は触れることすら怖いとでも言いたげに慧は優しくそっと触れてくる。
指先で涙を拭いて、頬を伝う。
怒りや嫉妬は消えたものの、慧が泣きそうな悲しそうな表情をしていた。切なそうに、眩しそうに、遠くの何かをじっと見詰めるように。
それを見たら涙が引っ込んだ。
「なんでお前が泣きそうになるんだ」
「…さぁ、なんでだろうな」
はぐらかされたが、深追いする気もない。
とりあえず、疲れきった体を慧の胸にもたれかからせれば、穏やかだったはずの手が不穏に動いて怪しく太股と下腹部を往復していた。
「何をしている?」
「悪かったと思うんだ、皓。…だが、あれだけ散々我慢させた後に出さずにドライってのは体に悪ぃんじゃねぇか?」
どうやら情事は終わっていないらしい。
確かに俺もこのまま出さずに終わるのはつらいし、いつもの優しい眼差しに戻った慧と穏やかに肌を重ねるのは好きだ。今は何もかも忘れて、擦れ違いすらもせめて今は忘れ去って温かくて幸せな愛情で満たしてほしいと思った。
だが、とりあえず、
「…せめて少し」
休ませてほしい。
と言おうとした時だった。なんの前触れもなく、後孔から垂れているコードを引っ張ってローターを引きずり出されたのは。
「ンんァ…!」
ずる、と粘膜を擦りながら出てきたピンクのローターには泡立った白濁がついていた。
白濁が少し内股についてしまって、物足りなさげに後ろがヒクつく。慧はローターが嫌な音を立てるのも構わずに遠くに放り投げると、ヒクヒクと収縮するそこを指でなぞった。
「いいだろ?」
と聞かれて俺に返事の選択肢はなかった。
「優しくしろ」
「あぁ」
だって、拒絶する慧はきっと悲しむから。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。