ボロボロと涙が止まらない。
怖いのもあるが、処理できない快感に体が追い付けなくて生理的に流れていた。
自由になった体を慧が振り向かせて、座らせてくれる。滲んだ視界でも慧が俺を見ているのが分かる。ゆっくりと手が伸びてきたが、ビクッと肩を跳ねさせればその手は引いていった。
慧の瞳からは怒りや嫉妬は消えていた。
その代わりに浮かんでいたのは後悔だった。
「……悪かった」
ぽつり、と呟かれた言葉。
「ここまでするつもりはなかったんだ。ただ…、お前が離れていくと思うと、俺は…!」
言わなくていい、その先は。
言わなくたって俺には分かるから。
勘違いさせた俺が悪かったんだ。
浮気を疑われたことの原因は俺にあって、慧はあまり俺を信用していないのかもしれない。だが、こうやって繋ぎとめようとしてくれているのはきっと俺を手放したくないからだろう。
(それだけで嬉しくなる俺って、単純)
だが、それでいいと思う。
気を抜けば崩れそうになる体に力を入れて、まだプルプル震えるが、必死に慧に近付いて彼の首に緩く腕を回してすがりついた。
膝立ちになっているだけなのにガクッと膝が折れれば、頼りになる腕が俺の背中に回されて支えてくれる。嗚咽はまだ止まらないが、自ら慧に擦り寄れば小さく息を呑む音がした。
「怖かった」
ドライは嫌いだ。
「…触ってないのに、っ、体が…、勝手にイッたままで、…とまらなくて、怖くて、」
「悪かった」
慧の股の間にへたり込む。
宥めるように背中をさすっていた手が頭に移動してきて、謝るように優しく撫でた。その優しさにまた涙腺が緩くなる。そして、慧がいつもの慧に戻った気がしてまた泣いてしまった。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。