慧は白いガウンを着ていた。
先程一緒にシャワーを浴びて濡れた髪がまだ乾いていないあたり、まだそんなに時間は経っていないかもしれない。赤っぽい茶色の髪はそのまま無造作にかき上げられ、なんとも言えない大人びた成熟した色香にクラクラしそうだ。
書類を仕上げると言った言葉は本当のようで、慧はシャープな眼鏡を棚の上に置いた。
慧の香水の香りが強くなっていく。
「その様子じゃ一度もイッてねぇみてぇだな。…褒めてやるよ。イイコだ、皓」
目の前に影がさした。
「んっ、慧…!やめ、…触るな、」
撫でるような触り方。
まるで猫でも愛でるようなその触り方は優しいが、ひどく物足りない。脇腹をなぞられただけで甘ったるい声を我慢できなかった。
「触るな?…へぇ、いいぜ。お望みなら一晩中放置してやったって俺は構わねぇけど?」
「それは!」
「お前が無理なんだろ?」
図星だ。この快楽には耐えられない。
懇願するように慧を見詰めれば、満足げに視線だけで笑った。脇腹を撫でていた指先が徐々に下がっていく。腰、太股、内腿、そして、ついに後ろに回って孔の表面にたどりついた。
今度は焦らされることはなかった。長い指はすぐに一気に根元まで埋め込まれたのだ。
「あッ、…ん、…っぁ、」
ぐちゃ、ぐちゃ、と水音がする。
粘膜を引っかきながら気紛れにローターを突き上げ、さらに奥へ奥へ押して進めていく指に、俺は呼吸さえ苦しくなってきた。
だが、体は素直に与えられる快感を甘受していた。なのに、何の前触れもなく、僅かな名残惜しささえ見せるわけでもなく、さっと指はまた抜かれた。…体の中がとても寂しい。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。