その後、俺の体は早くも昂らされた。
「っひァ、…ん、…んくっ、ぁ…!!」
前立腺にピタリと合わせられた無機質な玩具が強く振動する。その振動が中の一番弱くて敏感な部分に直接伝わって、神経を抉る。
全てを溶かすような甘ったるい快感が全身を駆けて、自分の意思では指先すら動かせないのに、刺激に合わせてピクピクと体が震える。息はとうに乱れていて、呼吸が苦しい。
バク、バク、と早鐘を打つ心臓を落ち着かせようと深呼吸をしようとしても、ローターが手加減してくれるはずもなく息が詰まった。
シャワーの音に混じって、ヴヴヴヴ、と僅かに振動音が聞こえる。中の粘膜を激しく擦る玩具の音で、下半身に熱が集まって腫れ上がっても俺じゃあどうすることもできなかった。
「ふぅ…、はぁっ、ぁん、…ゃ、」
快感を逃がす方法なんてない。
つい腰が揺れて、甘い息が出てしまう。
だが、無機質な玩具のこんな短調な刺激でイけるわけがなくて、開放されない熱が体の中に溜まって、燻って頭がクラクラする。
(違う!俺が欲しいのはこんなのじゃなくて…、俺は、慧に触れてほしくて…!!)
慧はここにはいない。
俺をおいて出ていった。
目頭が熱くなる。鼻の奥が、ツン、と痛くなる。視界がぼやけるのはきっと白い湯気のせいで、口から出てくるのはきっと甘い嬌声で嗚咽なんかじゃなかったと思うんだ。
快感があってよかった。胸が張り裂けそうになるほど痛くて苦しいのなら、快感に思考を溶かされて何も考えられなくなりたい。
だが、こんなに悲しくて、苦しくて、冷たい快感は初めてだったんだ。
(…慧、)
俺達はどこで擦れ違ったんだろうか。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。