慧はすぐに浴室に戻ってきた。
手に何かを持って。遠くからではよく見えなかったが、近付くにつれて慧の手の中にあるものが分かった。楕円形のそれは派手なピンク色をしていて、大きさは卵より小さい。
「ローター…?」
「安心しろ。防水タイプだ」
「…は?」
「お仕置きだって言ったんだが。足らねぇんなら、これで慰めとけよ」
そう言って、ローターを無理矢理俺の後孔に捻り込んできた。冷たい無機質な機械に指先が震えて、目尻に涙が滲んでくる。
慧の指にグイグイと押し上げられ、ローターが最奥に入り込むのを感じる。すぐ隣に前立腺があって、体に緊張が走った。なのに、心を伴わない体は刺激に期待するから最悪だ。
「萎えてねぇんだな」
「っ、」
「俺は書類でも処理してくるから、お前はしばらくそれで遊んでろ」
カチ、とスイッチを押す音がする。
すぐに、ヴヴヴヴ、と奥に入ったローターが震え出すのを感じた。最初からかなり強い振動で、直接前立腺を揺らす。甘い快感が駆け上がるのに目尻の涙は溜まっていく一方だ。
「ぁっ、あ…、ン…っは、ぁああ、」
中を揺らす振動がひどく気持ちいい。
立ち上がった俺のものからはまた先走りが垂れてきて、太股を伝い降りていく。液体や泡が降りていく感覚にすら背中が粟立った。
快感を逃がそうとして、だが、失敗して悶える俺を見下ろし、慧は再びシャワーから湯を出した。肌に打ち付ける湯が泡を洗い流していくが、ローターの振動は止まらない。
「…け、いッ、…と、めろ!…ゃあ、ァん、」
「その胸糞悪ぃ香水の香りがなくなるまでそうしてることだな。一人で遊んでおけ」
慧は今度こそ浴室を出ていった。
その後ろ姿が滲んで、ぼやけて、湯と一緒に一筋の涙が伝い降りて溶けていった。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。