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10.※


唇がわななく。

だが、言葉が見付からなくて開けたり閉じたりを繰り返した。信じてほしい、と懇願するような眼差しを慧に向けた自覚があったが、返ってきたのはやはり冷えきった眼差しだけだった。

「…なんも聞きたくねぇ」

長く骨張った指が一度抜かれる。

そして、息をつく暇も少しも与えずに、今度は数を増して俺の後孔に挿入された。

「う、ぁあッ、」

圧迫感から三本だと思う。

いきなり最奥を容赦なく突かれて、視界が真っ白になった気がした。一気に汗が吹き出して、体から力が抜けていく。だが、縛られた腕と股の間に立てられた膝が崩れることを許さなくて、ギリ、と負荷のかかった手首が痛んだ。

だが、快感や圧迫感はあるが、痛みやきつさはなくて後孔は柔らかい。慧はこうなることを予想して三本も挿入したんだろうが、間近で俺を睨む慧の機嫌は急降下していった。

(慣らさずにいきなり三本って、…かなり本気で怒ってるんじゃないのか、これ)

慧が唇を噛んだのが見えた。

その時、全てを説明したい衝動に駆られた。

伊瀬のこと、あの日の墓参りのこと、花束や指輪のこと。鷲のマークのこと、加賀美との関係を探っていること。ハニートラップを使ったこと、…だが、まだ抱かれていないこと。

(そんなの無理に決まってる)

危険すぎる。

いくら伊瀬が俺のペアだったと言っても、一流の情報屋の周りを嗅ぎ回るのは命懸けだ。慧にはまだ早いし、そんなことさせられない。

(…いや、違うな)

俺は、怖いんだ。

全てを打ち明けたところで慧は俺を信じてくれるんだろうか。自分の都合がよくなるように、でっち上げた嘘だと思われないだろうか。

その考えに、怯えに、俺自身驚いた。あれだけ本気で俺を愛した慧すら、半年前のTCCEで俺のために命を捨てようとさえした彼すら、俺は信じられなくなっているんだろうか。

俺達の心の距離は、いつの間にこんなにも離れてしまったんだろう。

…全く気付かない間に。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。