「それとも、加賀美に抱かれて、まだ満足してねぇからこうなってんのか?」
「ッ、違う!」
俺の言葉を慧は信じてくれたのだろうか。
分からないが、はぁ…、という重たくて長い溜め息の後、俺のものが素手で持ち上げられる。泡じゃなくて人肌の体温と感覚。それが気持ちよくて、一気に体の芯が燃え上がっていく。
太股が震えて腰を引いてしまいそうになったが、太股の間に慧の膝が立てられた。
動きは完全に封じられてしまった。
「逃がさねぇよ」
スポンジが滑っていく。根元を強めに擦って、裏まで念入りに洗っては裏筋を伝って上ってくる。先端は特に丁寧に現れて、一つ一つの細部も逃がさなずにじっくりと擦られた。
俺のものはどんどん立ち上がって、ぬめる先走りと泡が混じり合った粘着質な白濁の液体が、ぽたり、と浴槽に落ちた音が聞こえた。
「ぁっ、ァん、…慧っ、もう…!」
無意識に腰が揺れる。
いつもならここで許してくれて、甘やかしてくれるが、今の慧は顔色一つ変えない。
スポンジの端が先端に引っかかって、ピクリと腰が跳ねる。だが、俺に悪戯をして遊ぶでもなく、これ以上の快感を与えるわけでもなく、慧の手付きはあくまでも作業的でしかない。
胸が締め付けられるように痛んだ。
そして、慧の骨張った大きな手が腰を伝って背後へと回わされる。腰や尻を撫でるでもなく、迷わずに割れ目へと入っていくと、つぷ、と指を俺の後孔の中に入れてしまった。
「あぁっ…!!」
思わず首筋を晒す。
だが、それに反して頭の中は真っ白だ。
だって、長らく慧と肌を重ねていないにしては後孔が緩い。つい先程加賀美にたっぷり解されたそこは、なんの抵抗もなく、むしろまだ余裕があると言いたげに慧の指を根元まで咥えた。
これでもう言い訳はできない。いや、鋭い慧には最初から言い訳なんかできなかったが。
「緩ぃんだが、」
そう言った時の眼差しは一番鋭かった。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。