慧の手付きがとても優しい。
だが、そんな穏やかな時間はすぐに終わってしまった。スポンジが胸に達したのだ。そして、胸の突起を強めに擦っていく。
「っん、…ふ、」
乳輪をなぞって、先端を押し潰して、強く擦ったり優しく滑ったりと力加減を変えながら何度も念入りに洗われる。最初は我慢していたが、次第にピリッとした感覚が生まれた。
突起は熟れるように赤く充血して、立ち上がっていく。だが、慧は洗うことをやめない。
洗っているだけなのに気持ちいい。
素手ですらないのに、胸だけなのに、慧だと認識するだけで体の疼き方が違っていた。
逃げるように体を後ろに引いたが、すぐ背後には浴室の冷たい壁しかなくて、逃げるどころかさらに追い詰められてしまった。
念入りな洗い方はもう敏感な神経を嬲るようで、熱さと艶っぽさを含んだ吐息が浴室に響く。もはや上質な泡が肌を伝い降りる感覚にすら、感じ始めていて焦りが生まれた。
もちろん、その快感に下半身が反応しないはずがなくて、緩やかに勃ち上がっていく自覚がある。裸で隠す方法なんかなくて、慧の視線がそこに向かないように心の中で祈るばかりだ。
「慧、もういい。…もう、綺麗になったから」
「それは俺が判断する」
クン、クン、と慧が鼻を鳴らす。
加賀美の香水の移り香がほとんど消えたのか、それともボディーソープの香りが隠したのか、慧の眉間の皺がかなりマシになった。
そして、もう少しだけ両方の突起を洗うと、スポンジが下に降りていく。自然と慧の視線も降りていくわけで、一瞬目を丸めて固まってはまたすぐに苛立たしそうな険しい表情に戻った。
「感じてるんだな」
「っ、それは、」
「胸だけで?最近お前を抱いてねぇはずなんだが、…昔より敏感になってねぇか?」
(お前のせいだ!!)
と叫べたらどれいいだろう。
慧にネコとしての快感を植え付けられた挙句、最近はギクシャクして肌を重ねていなかったから欲が溜まっていたんだ。加えて加賀美の後に慧本人に触られたら、こうなるに決まってる。
だが、現実はそんなこと叫べなくて、控えめに不満の眼差しを慧にやっただけだった。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。