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13.


「あぁ、俺だ。…どうした、播磨」

『加賀美様、清宮様がいらっしゃっております。今すぐお会いしたいとのことで…』

「チッ、お引き取り願え」

『朝倉様に急用とのことでございます。足止めはこれ以上難しいかと、…加賀美様、』

体を重ね合うほど至近距離にいるんだから必然的に電話での会話も聞こえてきて、その内容に体が凍りついてしまった。

(慧が来てるだと!?)

慌てて時計を見た。やはり10時半を少しすぎているだけだ。予定よりかなり早い。というより、こんな時間に帰ってくるはずがない。

あれだけ体の中で燻っていた熱は一気に冷めて、それよりもむしろ氷水に突き落とされたような心地で、心臓が嫌に響いている。

慧が来ているなら情事は続けられない。

それは加賀美も分かっているのだろう。苦々しげに、忌々しげに顔を顰めていた。だが、俺にとっての死活問題はそれじゃない。

(…どうする?)

このまま部屋に帰れば慧と鉢合わせだ。だが、だからといってこの部屋で加賀美にシャワーを借りれば、その間に乗り込んでくる。

慧には今の姿を見られたくない。

なのに、

「分かった。連れてこい」

ビク、と自分の体が跳ねたのが分かった。

加賀美の言葉が信じられなくて、だが、混乱する俺をよそに加賀美は俺から体を離して服装を整えはじめている。先程の熱と欲なんて微塵も感じさせない涼しい表情で。

「ほら、あんたも服を着ろ。もうすぐあんたの主人が来る。残念だが、お楽しみはここまでだ。…本当に残念だがな」

「…え、え?」

「その格好で出迎えるつもりか?」

その一言にハッと我に返った。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。