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12.※


ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ。

携帯のバイブ音がする。俺のじゃないから必然的に彼のものだ。ガラステーブルの上に置かれたそれが振動する音がよく響く。

だが、それに構う時間すら惜しいと言いたげに無視していれば、ついに鳴りやんだ。

「ふ、…ぁ、あ…っ!」

たっぷりと三本入れられた指が中をかき回す。バラバラと動かされて、時折しこりに掠って意図せずに嬌声が出る。気持ちいい。

脚を動かせば、太腿に硬いものが当たる。早くほしい、と彼の腰に脚を絡めつけて声なく強請れば、慧が仕方なさそうに微笑んだ。

(分かっている。…慧じゃない)

だが、せめてそう思いたいんだ。

目を閉じて、彼にキスを強請る。

程なくして与えられた激しいキスには、慧が持たない煙草の苦味があって舌が痺れる。貪るように互いに舌を絡めて、唾液を混じり合わせて、吐息までも食らってしまおうとする。

だが、後に残った苦味だけがいつまでも口の中に残って、長く尾を引いていた。

そして、鋭い紺碧の吹き抜ける空のような香り。これじゃない。俺が好きな香りは、大好きな彼の香りは、これじゃないんだ。

(もっと優しくて、もっと穏やかで…!)

紅茶と、シトラスと、ムスクの香り。

後孔に咥えていた指が、ずるり、と抜けて腰が震えた。その直後バックルを外す音が聞こえて、ベルトが床に落ちる音が続いた。

ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ。

まさに抱かれそうになったその時、再びバイブ音が響いた。無機質な音が響く。

ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ。

初めはまた無視しようとしたらしいが、あまりにも鳴りやまない。チッ、と短く憎々しげに加賀美は舌打ちをして、携帯を手に取った。その物音が聞こえて、俺はようやく瞼を開けた。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。