俺のものもゆるりと反応して勃ち上がっていく自覚がある。それどころか、先走りまで滲み始めて、下着が肌に張り付いたのを感じた。
内側から火を付けられた体が熱い。だが、その火は暴力的で思考を焦がしていく。
そこは慧にしか触られたことのない場所で。
慧にしか触られたくなかった場所だ。
「みぃつけた」
一気に引きずり戻され、だが、熱に溶かされ焦がされそうな思考が現実に向く。
ここに俺の愛しい人はいなくて、今から俺を抱こうとするのは彼じゃなくて、俺は抵抗もせずに大人しく犯されようとしている。
その全てから逃げるために、
「ん、…もっと、」
俺はきつく強く目を閉じた。
慧の姿を思い浮かべれば、俺に触れる大きな手を重ねれば、優しくて恋しい体温を思い出せばこの時間を乗り切れる気がしたんだ。
「もっと…気持ちよくしてほしい」
(…慧、)
自分で自分を騙すのが虚しい。だが、今ばかりは勢いを増していく快楽の炎が、虚しさを跡形もなく消してしまうのは案外簡単だった。
そして、快楽を拾うのも簡単だった。
(慧はどんな感じで俺を抱いた?)
優しく快楽を引き出すように体を撫でる。開ききって空気に触れた素肌をなぞるように、俺が怖がらないようにそっと指先が滑っていく。
硬くなった胸の突起に熱く濡れた舌が這わされて、ペロリ、とザラつく表面が擦れる。ふぅ、と遊ぶように息を吹きかけられて、舌先で潰されて油断した頃に唇で甘く噛まれてしまう。
中を広げていく指。慧が相手だから緊張もなくなって、反射的に体がリラックスする。
さらに指をもう一本埋め込まれて、今度は本当に無意識に腰が揺れた。先走りは滴るほどになっていて、後孔に伝っていく。それに気付いて、愛しい彼がクスリと嬉しげに笑った。
(慧、…慧、)
もっと俺を愛してほしい。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。