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6.


「高虎…っ、ふ、」

濡れた唇が耳朶を食む。

そのままその感覚を俺に教え込むようにゆっくりと首筋に降りてきて、軽く啄んだり、かじるように遊び程度に犬歯を立ててくる。

だが、俺が油断していたのは確かで、というよりも、自分の体を餌としか見なくて目的をどう達成するかばかり考えていた結果だった。

「っ、!?」

ちゅ、と強く吸い上げられたのは。

遊びで軽く吸うとかじゃなくて、鋭い痛みすら感じるほどに思いっきり吸われた。

皮膚の薄い首筋でそんなことをされたらどうなるか、瞬時に頭に浮かんだ結果にすぐに加賀美の唇から首筋を離したが、もう手遅れだ。愉快そうに目を細めて、加賀美が笑った。

「いいじゃねぇか。シャツにギリギリ隠れる場所なんだから、脱がねぇと分からねぇよ」

「だからって!」

吸われた場所を触れば、ピリッ、とした鋭い痛みを感じた。絶対にはっきりと鬱血になってるだろうから、加賀美を強めに睨んだ。

(…どうやって慧から隠そう)

脱がなければ問題はないが、いつもシャツの一番上までボタンを閉めるわけじゃないから不審に思われるのは避けられないだろう。

寝る時はまだしも、ホテルのルームの共用スペースは一緒に使っている。隠し通せる自信はなくて、…いや、そもそも慧だって色仕掛けを使うから隠す必要さえないのかもしれない。

悶々と悩む俺を無視して、加賀美はやった者勝ちとばかりに俺の白手袋を剥ぎ取った。

「じゃあ、次俺な」

そして、彼は自分の深い紺色のネクタイを解いて、ソファーの下に捨てる。そのまま薄いグレーの細いストライプが入ったブラックのシャツのボタンをいくつか開け、笑みを深めた。

慧のような上品な肌の白さじゃなくて、野性味を帯びた健康的な肌。彼の喉仏が上下した。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。