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5.


主導権を握れる、と思っていた俺が甘かった。

実際には意識が溺れそうな濃厚なキスだった。

唇同士が重なり合って、その柔らかさを堪能する暇もなく熱く濡れた舌が入りこんできた。遠慮なんてこれっぽっちもなく俺の舌を絡めて、思うがままに口内を蹂躙して味わっていく。

ザラりとした舌の表面。唇に時折硬い犬歯が触れる。本当に食べられているようだ。

だが、それとは裏腹に俺の舌先を啄む唇は優しい。そのキスからは濃い煙草の苦味がして思わず顔を顰めたが、不意に尖らせた舌で上顎を擽るように撫でられて鼻から抜けるような声が出た。

「ん、ぁ…っ、」

混じり合う唾液。

くちゅくちゅと音がする。

二人っきりの部屋の静かさにはキスの水音も乱れた息もよく聞こえて、恥ずかしいと言うほどうぶじゃないが、聞きたくない。

後頭部をしっかりと強く押さえられて少しも顔を逸らすことができなくて、さらに時折耳の裏を撫でてくる。ふと内腿に何か擦り付けられた感覚がして目線だけを向ければ、それは既にゆるりと反応した加賀美のものだった。

(色仕掛けは成功しそうだな…、)

とか、冷静に考えている自分がいて。

だが、与えられる反応に熱を上げていく体とは裏腹に、心はすっと冷えきって。

それに気付かないふりをして自ら加賀美に舌を絡めていけば、虎がゴロゴロ喉を鳴らすように上機嫌に喉の奥で笑ったのが聞こえた。乱れた息さえも食らってしまいそうな虎だ。

「可愛いねぇ、…あんた」

「…ふ、っ、…は、」

「めちゃくちゃに犯してやりたくなる」

唇が離れて息を整える俺とは真逆に、加賀美は俺の耳のすぐ隣でそう低く囁いた。濡れた熱のこもった声が鼓膜を揺らす。

かり、と柔らかく耳朶を甘噛みされた。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。