「高虎、っ、答えてください」
「ん、兄弟はいるが、弟や妹じゃなくて、兄貴だよ。俺の四つ年上」
「へぇ、…そうなんですか。てっきり高虎が兄だと思っていたので驚きました」
嘘をつくタイプじゃない。
少なくても嘘をつく可能性は低めだ。
ぽい、と右手の白手袋を投げ捨てた。服が残っているだけ質問のチャンスがあるから俺としてはあまり脱ぎたくないが、加賀美が面白くないと感じるのは当たり前だった。
ソファーの下に落ちた白手袋を一瞥してから、じとりと恨めしそうに俺を見てくる。
「…それだけ?」
「えぇ、これだけですよ」
「せめてもう片手も外せよ」
柔らかいタッチで胸に触れてくる。
逃げようとしても定位置となった腰に加賀美のもう片方の手が戻っているから、動けない。胸の突起を押し潰したり、撫でたり、軽く摘んだりするからピク、ピク、と肩が跳ねた。
情事は仕事だと割り切っているが、冷静を保つために快感はあまり欲しくない。胸を触られるくらいならキスの方がまだマシだ。
「じゃあ、キスしてくれたら外します」
キスならまだ主導権を握れる。
そう言って、クイッ、と加賀美の顎を持ち上げることで視線を絡め合わせた。
猫が鳴くように甘く囁いてみる。加賀美の口角を焦らすように啄んで焦らせば、俺の思惑通り胸を弄っていた手が離れていった。その代わりに俺の後頭部が押さえられて、引き寄せられる。
グッと近付いた距離。香水の香りがさらに強まって、すぐに視界のピントが合わなくなる。
「ほんと、あんたってたまんねぇ…!」
そして、虎は俺に噛み付いた。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。