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2.

※慧side

「あ、ちょっと待って。け、携帯を先程の部屋に置き忘れてしまいました…!」

「はぁ?よりによって今かよ!」

「取ってきますね!」

らしくないな、とは思った。

いつも抜かりない辻がこんなにも慌ただしいなんて。だが、俺の頭は皓のことでいっぱいで、辻が走っていってもノックの音もドアを開いた音も聞こえなかった。やっぱり鞄の中にあったんだ、って簡単にそうとしか考えていなかった。

だが、それにしては辻が戻ってくるのが遅くて、一人っきりでエレベーターを待つ。こんな時に限ってボタンを押してもなかなかエレベーターが来ないんだから、焦りばかりが募る。

「すみません、お待たせしました」

「…遅ぇ。さっさと帰るぞ」

「今日は予定より早いんですから、書類を終えてから戻ったらどうです?急ぎの書類がいくらかありましたよね?」

「んなもん後でやる」

今は皓が最優先だ。

やっと来たエレベーターに辻と一緒に乗り込んで、扉を閉める。エレベーターは途中で止まることなく順調に一階に向かったが、それでも一秒一秒がとてつもなく長く感じた。

やっと一階について、早足でエントランスを横切りながら地下駐車場に向かう。

本当は辻に行かせて俺は待っているだけでよかったが、じっとしていることができなくて気が付けば自分の足で駐車場に行った。

「慧、やっぱり書類を終わらせた方が…」

「ちっ。よこせ。ホテルに帰って終わらせる。明日に渡してやるからそれでいいだろ?」

「いえ、今終わらせてください」

「んなに急ぎの書類はねぇよ!」

ここで違和感を感じた。

どうしてそんなに引き留めるんだ、と。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。