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胸騒ぎ

※慧side

「清宮君、君と話をするのは本当に楽しいんだけど私も年でね、年老いた体ではつらくて。…また今度誘ってもいいかい?」

やった、と思った。

この取り引き先の会長には久々に会うから接待が長くなるだろうとは思っていたが、予想外に早く切り上げてくれたのは相手だった。

今夜は皓との仕事の方でオーナーに会う予定で、だが、この会長の接待がとても重要だから渋々皓一人に行かせた。あいつの実力なら大丈夫だ。そうは思っていても、男というのは好きな人を守りたい生き物で彼の傍にいたい。

…それに胸騒ぎがするんだ。

とても嫌な感覚。さっきからずっと。

「えぇ、もちろんです。気付かずに話し込んでしまい、誠に申し訳ありません」

「私こそ悪いね。折角来てくれたのに」

「いえ、こちらこそ貴重なお時間をありがとうございました。楽しかったです」

だから、早く皓の傍に行きたい。

出る準備をするよう辻に目配せして、さっと壁にある時計で時刻を確認する。

10時を少し過ぎたところだ。今からすぐに向こうのホテルに戻れば、10時半過ぎには着くだろう。予想よりも早い帰りとなったが、皓はまだオーナーと話しているんだろうか。

この時、皓のことばかり考えていて、辻が誰かにメールを送っていたことに気付かなかった。

「…それでは、失礼致します」

一度頭を下げて部屋から出る。

辻が扉を閉めた瞬間、ホテルの廊下を走って駐車場に行きたいくらい急いでいた。

だが、実際、廊下には消音用の絨毯が敷かれていても走ることなんてできなくて、せめて早歩きでエレベーターホールに向かった。辻が着いてきてないのが苛立たしく感じた。

「おい、早くしろ。帰るぞ」

「と言われましても…!」

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。