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騙し合いのゲーム


「今日はまた一段と綺麗だな。だが、俺以外の男にも見せてると思うと、…嫉妬してしまう」

「やだ、コウったら!」

ほのかに薄暗くて雰囲気を出す照明。

歌詞はなくても、劣情を煽るような音楽。

スッ、と差し出された煙草に自然な動作でポケットからライターを取り出し、火を着けてから女の瞳を見詰めれば、彼女の目がふと笑った。

それに何かを企んだような悪戯っぽい笑みを返し、煙草を口元に持っていこうとする彼女の指を捕まえては自分が代わりに煙草を銜えて、吸った。驚きで丸まっていく大きな目。反応される前に柔らかい唇に噛み付いた。

そして、キスをしながら煙を移す。

「おいしかった?」

「…わ、分からなかったわ」

「仕方ないな。じゃあ、もう一回」

気持ちばかり煙草を吸って、また唇を重ねた。

こんなものは誠意も本気も伴わない遊びだ。金でレンタルした恋人だと彼女も理解しているだろう。

ホストにとっての甘い言葉なんて、コンビニ店員のいらっしゃいませやありがとうございましたのように半ば反射的に、そして、言ってしまえば呼吸のように自然に出てくる。

普通であれば鳥肌が立つほど薄寒い台詞やヘドが出そうな甘い言葉も、金で雇われた恋人が演技をする分にはちょうどいい。

そうだ。そこに誠意なんてものはない。

どれだけ誠意を向けているか。騙し、信じ込ませることこそがプロとしての手腕だ。

────だから、俺がその役割に向いていた。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。