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張り巡らされた罠


「あ、榊さん!こんばんは!」

「こんばんは。…あ、コウさんもこんばんは」

「あぁ、どうも。今日は来るのが早いな」

「慧さんが珍しく仕事をしてくださったので、早く上がれたんです。珍しく、」

榊が皮肉を言いながら苦笑いをしてみせた。

因みに彼の本名は榊諒太ではなく辻和泉だと分かったが、当然何も知らないふりをしてこれからも榊と呼ばなくてはならない。

そして、挨拶をした後、物思いにふけるように一瞬目線が逸らされた。失望したような、もしくは不可解そうな表情をしている。たぶん、逆探知が働かなかったから不思議に思っているんだろう。

どうして誰も接触してこなかったのか、と。

しかも、送り主不明のメールにAV女優を勧められる珍事まで起きた。逆探知をキャンセルするならまだしも、送り主を不明にするのは相当骨が折れる。女優を勧めることにあそこまで熱情を注ぐ必要はあったんだろうか、あの警備員は。

榊には首を捻っているところ悪いが、さっき爽やかな笑顔で挨拶した警備員のせいで、俺達は昨日お前が履いていたパンツまで知ってるんだ。グレーのボクサー。もちろん、今日のは知らない。

因みに、店に来てからあのブラックリストを何気なく開けば、…いや、心の癒しを求めて開けば、一番上の写真が変わっていた。

たぶん、蓮のお気に入りだ。

巡回の時にこっそり差し替えたんだろうが、俺はまた差し替えておいた。俺のお気に入りの美乳な年下清純派。開ける機会があるから分からないが、開ければきっと榊は喜ぶ。

一回くらいきちんとあの女優のよさを語り合う機会はないんだろうか。…ないだろうな。

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騙し合うこのゲームは、
本気で惚れた方が負けなのだ。