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5.


その一言に息が詰まった。

それは荒い縄で食い込むほど強く首を締められるような、冷えきった氷の手で直接心臓を鷲掴みにされたような衝撃だった。

そして、俺が怒るのも容易だった。

「簡単に言ってくれるよね、お前」

お前、とドラゴンを呼んだのは初めてだった。

俺は敬意を払うべき他の王達はあなたと呼んでいたし、仲間や守るべき聖獣達は君と呼んでいた。お前、と呼ぶのは昔から一握りしかいなくて、ほとんどが同等だと認めた仲間だ。

とにかく、雷の始祖であるドラゴンにこんな荒っぽい言葉が出るほど俺は怒っていた。

「殺す?…世界を守りたいのは分かるけどさ、これがイチルじゃなくてカルナダ様だったらお前は殺せるの?契約主をあっさりと?」

びゅん、と鋭い風が吹き抜ける。

ざわり、と葉のない冬の林の木々が揺れ、眩しい黄金色の髪がなびく。風は聞いたことないほど鋭利で荒々しい音で吹き抜け、彼の顔のすぐ隣にあった枝はバッサリと綺麗に切れ落ちた。

彼に怒りたいわけじゃない。だって、彼は世界を思って、正しいこと言っているんだから。

だが、初対面だったフェンリルにイチルを殺せと言われるのと、俺がこの世界で初めて会った王であり、この世界のことを教えてくれたドラゴンにそう言われるのは重みが違っていた。

頭に血が上るほど怒り狂っていた俺は気付かなかった。カルナダ様を殺せるか、と聞いた時、彼が一瞬息を詰まらせていたのを。

「だったらどうするつもりだい?」

「もちろん助ける」

「それこそ簡単に言ってのけるね。聖剣を抜いても抜かなくても彼は死ぬ。馬鹿なことを言うんじゃないよ。目を覚ましたらどうだい」

「助ける方法はもう見付けてる」

「どうやって?……っ、まさか、」

ドラゴンの声に焦りが滲む。

わななく唇。大きく揺れながら俺を見ていたその眼差しは、本気か、と言外に聞いていた。

「フェニックスに会ってくる」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。