『てめぇらルイに何してんでぇええ!!!!』
表にいたルイは紙袋を持っていた。
たぶんデリバリーの途中だったんだろう。紙袋を庇うように抱きしめるルイに向かって二匹の野良犬が牙を剥き出しにして唸っていた。
あれは聖獣じゃない。動物だ。だが、属性を持たない動物だとしても相手は自分よりも大きい二匹の犬で、ピィたんは戦闘向けのランクじゃない。
攻撃魔法すら持たないDランクのピィたんからすれば、きっと怖くてたまらないんだろう。だが、それでも、ルイを助けに行くピィたんの目に躊躇いなんてものはなかった。
『どきやがれぇぇええええ!!』
叫びながら突っ込んでいった。
「きゃうんっ!?」
そのまま勢いよく突っ込んで、一匹目の左前足にピィたんの嘴が突き刺さる。それで退治できた。きゃうきゃう言いながら走り去った。
問題は二匹目だ。
立ち上がったピィたんはルイを背中に隠すには小さすぎて全く庇えていなかったのに、怖くて怖くて翼がプルプル震えていたのに、それでもキッと野良犬を睨み、一歩も退こうとはしなかった。
「グルルルルル…」
野良犬が唸る。剥き出しにされた牙の鋭さは一撃でピィたんの皮膚を破れる鋭さだ。
「ピィたんじゃ無理だ。引いてなよ!」
ルイの言う通り無理な戦いだ。
だが、大事な人を背中にして誰が戦いを放り出して逃げることができるんだろうか。その後ろ姿の凛々しさに物陰に隠れたまま手で口元を覆った。
(一回くらい兄貴って呼んでもいいかもね)
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。