「お兄ちゃん、だっこ」
「こら、ヨト!風の王様に失礼よ!」
「構わないよ。君もおいで、リィシャ」
目を輝かせて走ってきたヨトを片腕で抱き上げて、もう片腕をリィシャに伸ばす。中学生くらいの女の子を片腕で抱き上げるのには無理があるが、抱き締めることなら問題はない。
リィシャは昨日俺に言ったことを気にしているようだったが、腕を広げて催促してやるとおずおずと飛び込んできた。可愛い。
二人をぎゅっと抱き締めてからヨトを地面に戻して、リィシャからも腕を離した。俺も屈んで目線を合わせれば、またヨトに抱き着かれる。
「昨日、泊めてくれてありがとう」
「…そんな、私、失礼ばかり…」
「リィシャいい子だったよ」
「僕は!?」
「もちろん、ヨトも。だから、君達二人に俺からのちょっとしたお礼」
ちゅ、とリィシャの額にキスを落とせば、彼女の顔がほんのりと赤く染まった。きゃっきゃとはしゃぎながら自分で前髪を上げるヨトの額にも、微笑んで優しく唇で触れた。
「君達の未来が幸せでありますように」
これは祝福と呼ばれるものだ。
加護と違って、王の力を切り分けて与えるのではない。祝福を与えた王の属性の精霊達が祝福を受けた者を見守り、必要な場合にはほんの少しだけ力を貸してくれるだけだ。
風の精霊達の場合、迷子になりにくくなったり、強風の日でも洗濯物が飛ばなくなる程度だと思う。少しだけの贔屓。
(風の精霊達、この二人の子供を気にかけあげてね。必要な時は守って。お願い)
他人思いで、心の底から優しい二人の未来が幸せで、安全でありますように。
精霊達が頷く気配がした。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。