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2.


町の外れへと降りる。

森に近いその場所には何もなくて、そこに彼が存在していた証拠すら見付からなかった。

ヒッポグリフが死んでしまった場所。…俺が殺した場所。羽の一枚も、爪痕の一つでさえ残っていなくて、まるで最初から何も起こらなかったようだ。

深秋にしても冷たい風が肌を刺して、骨の髄まで凍えさせてしまうようだ。吐き出した息は白く曇ったものの、またすぐに消えていった。

身を屈めて、土を撫でる。

(…ここにいたんだよね)

あの時は優先すべきものがあった。

ケルベロスの話を聞くことを優先したから、ゆっくりと悲しむ時間さえなかった。

だが、もういいだろう。

王として振る舞うべき時間は終わった。イチル達にも全て説明した。だったら、今くらい死んでしまった友人を悲しんで、一人で泣くことくらい許されてもいいと思うんだ。

皆の前では気丈に振る舞っていた。

だって、そうしないと困るんだ。

王が泣いたら、シルフやマーメイドはどれだけ不安になるんだろう。仲間が泣いたら、イチル達はどれだけ困ってしまうんだろうか。

だから、ずっと我慢していた。

だが、もういいだろう。もういい。皆眠っているから、静まり返った夜のほんの少しの時間だけを亡き友人を悼むことに使いたかった。

イチル達の前では笑えていたのに突然表情が動かなくなって、涙が出てくる。誰も見ていないんだから思いっきり泣き叫んでもいいのに、頬を伝い降りるだけの涙に嗚咽はなかった。

地面に爪を立てる。彼はここに横たわっていたにも関わらず、掴んだ土は冷たくて命の気配も僅かな体温ですらも感じられなかった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。