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10.


ぱち、と何かが弾けた。

それは小さな光だった。

弱々しくて、随分と頼りない光だったが、紛れもなくイチル自身の光だったんだ。

「か、みなり…?」

信じられないと言いたげな声色だったが、驚きに染まっていた顔はいつしか安堵を浮かべ、嬉しそうに微笑んでいた。手の平の上で弾ける光を本当に嬉しそうに見詰めている。

「やっぱり雷だったんだね。セットレイア王家って代々雷の使い手で有名だし」

「おう、よかったじゃねぇか」

ホーリエとオーツェルドは喜んでいた。

だが、俺はその光が雷だとは思えなかった。本物の雷を使役するカルナダ様が鋭いと言いたいわけじゃないが、…それよりはずっと柔らかくて、眩しいと思ったんだ。雷じゃなくて、むしろ、

(…光属性そのもののような気がする)

本当に弱々しいから正確な判断が付かないが、シルフもマーメイドも黙っているのを見ると俺の勘は間違っていないらしい。

とにかく、雷属性だとしても光属性だとしてもイチルに魔力があったことが嬉しくて、使えればどちらでもいいんだろうと思う。

この時は、そんなことを思っていた。

闇の王の忠告。闇に呑まれた聖獣。不自然なタイミングで目覚めた魔力。稀少な光属性。

イチルが魔力を使えるようになった事実に俺まで嬉しくなっていたが、本当はケルベロスの助言に従って、この事実と忠告を結びつけて、一刻でも早く会うべきだったんだ。

光の女王、アルテミスに。


ぱちり、と弾けた小さな光。

それは開けてはならないパンドラの箱を開ける鍵であり、また破滅と絶望の中に唯一残された最後の希望でもあったんだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。