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7.


昔から気になっていたんだ。

イチルにはほんの少しも魔力がない。…だとしたら、どうして俺と契約できたんだろうか。

ドラゴンの言う通り、魔力が一欠片もないのなら、その人間に契約の権利はない。魔力とは、言わば人と聖獣が交わす契約書に残されるサインであり、互いを結ぶ強い絆である。二枚のリボンで蝶々結びをするのに、一枚では成り立たない。

しかも、カルナダ様とドラゴン、ホーリエとマーメイドのように、高位の聖獣ほどその契約主の魔力量も桁外れに多くなっていく。

魔力量はともかく、イチルに完全に魔力がないなら契約は成り立たない。俺からの一方向からの魔力だけじゃ契約は完成しないんだ。

それを裏付ける証拠はある。

イチルは俺の言葉を理解していた。

聖獣の言葉を理解することにも魔力は必要だ。俺がイチルに名前を教えたのはログ・ノーレンにいた頃で、それを契約完了だとしても、言葉が通じ始めたのはもっと前、城にいた頃だ。

つまり、イチルには魔力がある。

どうして俺の言葉しか分からないのか、微量すぎると勘違いされたのはなぜか、分からないことはまだまだあるが、今、はっきりと言えることがある。

(魔力量が増えている)

俺を召喚した時の力が前回よりも強い。

そして、何よりも俺以外の聖獣、例えばシルフの言葉も理解できるようになっている。

十五歳を過ぎてしまえば、魔力はもう目覚めることはない。ドラゴンは確かにそう言っていた。なら、この状況は一体なんなのか。イチルの潜在的な魔力量はどれほどあるのか。

実は俺も王として徐々に成長しているらしく、本能的にいろんなことが分かってくる。

魔力とは何か。今ならはっきりと分かる。生命の根幹に結びつく力だ。その人の魂に直接結びついている力。触れれば、その人の量が分かる。ホーリエも、オーツェルドも。

なのに、イチルだけは分からない。

あることは間違いないのに、肌に触れても何かに邪魔をされて全体が見えないんだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。