ホーリエにお腹を撫でられる。ちゃっかりとオーツェルドも翼に触っていて、ソファーの背もたれの向こうから顔を出したシルフとマーメイドにも体のあちこちを撫でられていた。
ほんの小さな願望でしかないが、できればシルフかマーメイドにぎゅっと抱き締められたい。
あの柔らかそうで形のいい胸に…。
と思っていたところで、長椅子に座っているイチルがむすっと顔を顰めているのが見えた。
首を傾げると苦々しげな舌打ちが飛ぶ。
そして、
「来い、タク」
それは普通の言葉ではなく、強い力を伴っている召喚の言葉だった。
「…あんた、何考えてんの?」
この距離で召喚する必要なんてないのに、強く引っ張る力に気が付けばイチルの膝の上に乗っていた。
しかも、人型になっていてイチルの膝を跨ぎながら向かいあって座っている。重いだろうと降りようとすると、イチルの腕が腰に回って離してくれない。深い青の瞳に楽しげな色を見付けた。
『まぁ、主様をだっこなんて羨ましいです』
「だっこって、…そんな犬や猫みたいな…」
シルフの言葉に呆れてしまった俺とは裏腹に、イチルは満更でもなさそうだった。だが、離したくないとでも言うような腕をわざわざ引きはがしたくないと思うあたり、俺も流されているんだろう。
それより、真面目な話、気になることがある。
それはイチルの魔力についてだった。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。