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2.


「改めて、イチル。…その、」

緊張しているわけじゃない。これだけ優しい眼差しで見詰められて緊張するわけがない。だが、覚悟はしていてもどこから話を始めればいいのか分からなくて、口を閉じてしまった。

一秒、また一秒、時間が過ぎていく。

必死に悩んで、だが、やはり分からなくて、逃げるように苦笑いを浮かべた時、ふとイチルが笑うように目を細めた。トントン、と自分が座っている長椅子の空いたスペースを叩く。

そして、犬でも呼ぶかのような軽快な口笛に、躊躇いや緊張が馬鹿馬鹿しく思うほど脱力して、清々しくイチルの隣に座ってやった。

その途端に肩に手を回されて引き寄せられ、イチルの胸に飛び込む。ぶつかった胸板は思っていたよりもしっかりしていて、光を集めたかのようなサファイアが穏やかだった。

「俺はお前のことが知りたい。だが、根掘り葉掘り全てを白状させたいとは思わねぇよ」

優しい優しい声だった。

「話してもいいと思うもんだけ教えてくれればいい。…お前の言う通り俺達は仲間だ。だから、話したくねぇもんがあったところでお前を敵だと思う馬鹿な奴はいねぇから安心しろ」

その言葉に肩から力が抜けた。

イチルはいつも助けてくれる。城にいた頃からずっと。きっとこの王子様は自分の何気ない行動が、言葉が、どれだけ俺を励まして、どれだけ俺に力を与えたか自覚はないんだろう。

「俺がいるから怖がんな、タク」

ずっと聞きたかった名前だった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。