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10.


「俺達はオリオンの封印を強化したい訳なんだけど、どうすればいいの?」

「すまぬが、それは私も知らぬ。私が知ったのは二人が死んだという結果だけで、聖剣の在処もオリオンがどういう封印を施したのかも分からぬのだ。…私が知っていることは、これが全てだ」

その言葉に嘘はないらしい。

情報はたくさん得ることができた。大きな一歩だ。だが、それはどれも現状を把握するものでしかなくて、これからどうすればいいか決められるほどの決定打にはならない。

意図せずに眉間に皺を寄せていると、ケルベロスが助言をくれた。

「光の女王に会いにいくといい。ノクトに加護を与えた彼女なら、必ずや何か知っている」

「光の女王…?」

「アルテミスだよ。…貴殿が望めば、必ずや光が道を指し示してくれることだろう」

さて、とケルベロスが一度言葉を区切った。

「もう夜も遅い。知っていることを話し終えたのだから、私はそろそろ失礼するとしよう。貴殿らも早めに休まねば朝が来る」

「待って、まだ聞きたいことが、」

「すまぬ。これ以上は知らぬ」

「……そう」

ケルベロスが椅子から立ち上がり、闇が揺らめいた。窓が全て閉じられきった書斎、風なんてないから蝋燭の光が揺らぐこともないのに、淡くほのかに赤っぽいその光が靡いていた。

ゆらり、ゆらり。

ケルベロスのところだけ闇と光の境目が濃くなって、だが、彼と闇の境界がどんどん曖昧になって分からなくなっていく。

カツ、カツ、とひどくゆっくりと彼が俺の方に歩み寄ってくる。その姿は優雅さを失わないまま洗練された凛々しさを滲ませていた。そして、ソファーに座った俺の隣でとまる。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。