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2.


はぁ、と長く重たい溜め息が吐き出される。

「人がどれだけ心配していたのかも知らずに、すぴすぴ呑気に眠りやがって…」

『回復に必要な睡眠だったんだよ。ほら、シルフが看病してくれたから早く治ったの。シルフは俺の属性の子だし?美人だし?』

「…っ、あのなぁ、自分のとこのSランクに会えたのが嬉しいのは分かるが、俺とお前は契約してんだよ!起きたら俺のとこに来い!」

『…もしかして、嫉妬してる?』

驚いたように唐突に指が離された。

一瞬落とされてしまったが、そのままイチルの肩へと乗る。手で軽く払われてしまったから仕方なく逆の肩に飛び移ったが、ふと一瞬だけ見えた耳はほんのり赤く染まっていた。

『してるんでしょ、嫉妬』

「してねぇよ!」

強めに叩かれてベッドに落ちた。べふ、とか妙な声が出てしまってイチルを睨んだが、痛くも痒くも無さそうに鼻で笑われた。

俺にこんな扱いをするなんてシルフが怒ると思っていたが、予想に反してベッドから身を起こして手櫛で髪を梳いていた彼女は、微笑ましげにクスクスと笑っていた。

『仲がよろしいのですね』

だが、さらに予想外だったのが、

「…まぁな」

そのイチルの返事だった。

イチルが仲がいいことを肯定したことにはもちろん驚いたが、それよりもさらに驚いたことは彼がシルフの言葉を返したことだった。

あまりにも自然なことだったから、イチル自身でさえも気付いていないかもしれない。だが、彼は確かにシルフの、人間に似た形を持つもののSSランクのように完全に人間にはなれない聖獣の言葉を聞き取っていたんだ。

(どうして…?)

だが、俺よりも早くにイチルが口を開いた。

「書斎で待ってる」

そして、部屋を出ていってしまった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。