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古(いにしえ)の賢王と青年


温もりに包まれて、覚醒した。

それはぱっちりと目が覚めたというよりは微睡みの中で意識を取り戻したのに似ていて、まだぼんやりとしている頭で温もりに擦り寄る。

俺が擦り寄ると擽ったそうに揺れるのを感じたが、ふるん、と軽く揺れただけだった。それが逃げないのをいいことに、すりすりと頬ずりをした。

それは程よい弾力がありながら柔らかくて、ふにふにしてて、人肌くらいに暖かくて。

というより、人肌そのもので、

(ん?人肌?)

重たい瞼を開ける。

視界いっぱいに広がったのは白いきめ細やかな肌だった。だが、それは普通の肌ではなく…、

(…胸?)

サラサラでストレートの濃緑色の髪が流れるように広がっているのが見えた。そして、俺と目が合ったシルフはにこりと微笑んだ。

『お目覚めになられましたか、主様』

つまり、俺は小鳥の姿のままシルフの胸にダイブしながら眠っていた、と?

『…お、おはよう』

『おはようございます』

あー、あれがシルフの胸だって知ってたなら、寝惚けたふりをしてもっと触っておくんだった。

美人に抱かれて眠って、しかも、胸が触り放題なんて男の夢だし、…というより小鳥の姿じゃなくて人間の姿で頬ずりすればよかった。

俺だって健全な男だもん。

だなんて口が裂けてもシルフに言えないことを内心で呟き、ちらっと控えめに谷間を凝視していた瞬間、ひょいっと持ち上げられた。二本の指で摘み上げられる感覚はなかなか懐かしい。

翼をパタパタさせても、足を蹴ってみても、全体重でお尻を振ってみても離してくれなくて、クルリと回転された先に不機嫌そうな顔があった。

『え、何その不機嫌な顔。至福の時間を邪魔されたのは俺のほうなんだけど。理不尽!』

「お前、ちょっと残念だよな」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。