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15.

※イチルside

約半月ぶりに見る小鳥はボロボロだった。

柔らかい純白だった小さな体は乱れて土や砂で汚れ、あちこちから血が滲みだしているし、右の翼に至っては抉られたような深い噛み傷からまだ血が止まらずに滲みだしている。

心配そうにケルベロスがそれに触れようとしたが、両手でしっかりと包み込んで隠すと意外にもあっさりと引いてくれた。

「ホーリエ、頼む!」

ハッと我に返ったホーリエがマーメイドを呼び出した。マーメイドはすぐに状況が呑み込めたようで、ケルベロスに軽く一礼をすると素早く柔らかい水の膜で小鳥を包んだ。

(モチヅキ、…いや、タク、)

半月ぶりなんかじゃない。

こいつはずっと俺の傍にいたんだ。

瑞鳥から人間へと、人間から小鳥へと変化するのをこの目で見た。こいつの正体はもう分かった。ケルベロスだってはっきりと風の王と言っていた。

だが、正体がどうとか関係なくて、俺はこいつが大切なんだとも思い知った。

傷付いていれば抱き締めたいし、守りたい。

誰よりも傍にいてほしいし、傍にいたい。

倒れた時は心臓が止まるかと思った。頭が真っ白になって何も考えられなくて、体が急速に冷えていく。とても嫌な感覚だった。

だが、マーメイドから治療を受けるタクに集中するあまり、ケルベロスの眼差しには気が付かなかった。魔獣を睨んでいた時よりもずっと冷たくて、警戒を顕にした眼差しに。

それが俺の背中に注がれていたことに。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。