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14.


「人の子よ、身の程をわきまえろ。私はお前と話をしているのではない」

「俺はこいつの契約主だ。話があるなら俺を通せ。勝手に傷付けてんじゃねぇよ」

「契約主?…なるほど」

イチルの腕にそっと手を添えた。小さく頭を横に振ると、渋々といった感じで剣が引かれた。

俺に注がれる視線は静かなものだったが、説明を求めていた。急かすことはしたくないんだろう。だが、目は口ほどに物を言うとはよく言ったもので、ついクスッと笑ってしまった。

「ちゃんと説明するから」

俺も覚悟が出来たんだ。

絶え間なく崩れていったヒッポグリフの体は、ついに全てが砂となっと消えた。名残すら残さずに、全てが綺麗に消えたんだ。

名残惜しい。もっとこの場に留まって、追憶に浸っていたい。だが、それは今すべきことじゃない。今は町の被害を確認して、この世界の現状を把握して、前に進まなければならないんだ。

「ケルベロス、話がある」

「あぁ、」

「場所を変えよう」

立ち上がろうとするその瞬間に立ち眩みがした。

力の使いすぎと失血だと思う。町全体の空気の揺れに注意しながら大規模な攻撃をしていたし、ケルベロスに噛まれた傷からは僅かだがまだ血が滲みだしている。

バランスを失って、足元がふらつく。抱きとめようとイチルが手を伸ばしてくれたが、その腕は虚しく空ぶった。この距離で、だ。

どんどん体が小さくなっていく。

ついに小鳥の姿に戻ってしまったが、咄嗟に手を出してくれたイチルにより地面への衝突は免れた。

久々に感じた体温は、緊張の糸が張りっぱなしだった心を安心させてくれた。とても落ち着く。温かい。俺は心地いい温かさに微睡んで、眠った。意識を手放したんだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。