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13.


王であるのがラッキーだと思ってた。

強いのに越したことはないし、格好いいなだなんて単純にそう思ってた。

だが、実際はそう単純なものじゃなくて、俺の肩に預けられた無数の命の重さに、彼らを守らなければならない義務に気が付かなかったんだ。

力とは、なんのためにあるのか。

守るべきものを守って初めて正しい使い方をしたと言えるそれで、…俺は、殺した。守るべきものを、慕ってくれていた民を、大事な友人を。

助けたかった、助けられると思っていた。そんな薄っぺらい言葉は責任を果たせなかったことへの言い訳でしかない。打つ手がなくなる前に助けなければならなかったのに…。

「貴殿のせいではないよ。誰にも防げなかったし、貴殿は確かに王の務めを果たしていた」

「…俺のせいだ。俺が…!」

「風の王、…貴殿は優しい。優しいからこそ私よりもよい王となるだろう。…だが、優しいからこそ傷つき、苦しむことになるよ」

ケルベロスが手を伸ばしてくる。

たぶん、傷を確かめようとしているんだろう。だが、バチッ、とその手は俺の頬に届く前に強い力で叩き落とされた。

「っは?」

そして、緩やかな圧迫感。

まだ震えのとまらない体に回された腕にグッと強く抱き寄せられて、誰かの胸に飛び込む。誰かなんて、そんなことは反射的に分かっていて、サラリと金髪を靡かせた彼は鋭い青色の眼差しでケルベロスを射抜いていた。

手に持っている剣は冷たく月の光を反射していて、ピタリとケルベロスの喉にあてられていた。

やめさせようと身じろぎをすると、さらに強い力で抱き締められる。ケルベロスが鋭く目を細めた。だが、イチルはたった少しの怯えも見せず、むしろさらに敵意を強めていく。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。