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12.


何度も何度も体を撫でる。

だが、冷たくなっていく体が消え、あるべき場所へ還るのを引きとめられるはずもなくて。触れた指先から砂になって舞い散るそれを、どうしようもなく見送った。

ふと誰かがこちらに歩み寄ってくる。漆黒を持ったその人物は俺とヒッポグリフの数歩前で立ち止まると、地面に片膝を着いて跪き、頭を下げた。

戦っていた時の敵意や刺々しさは跡形もなく消えていて、夜の穏やかさを帯びた気配だった。

「申し訳なかった。貴殿の民を、…私は何体も殺してしまった」

「いや、あなたのせいじゃないよ。俺が甘かったんだ。…助けられると思ってたっ…!!」

血を吐くような叫びだった。

そうだ。助けられると思ってた。

助けられないとは分かってた。なのに、それでもきっとどこかに希望は残っている、と信じていたんだ。それで聞き分けの悪い子供のように駄々をこねて、…最後は、俺が殺した。

それは力に対する過信かもしれないし、残酷な現実から目を背けたかっただけかもしれない。

(…今、やっと分かったよ)

王という立場の重さを。

俺はケルベロスを責めた。だが、本当に責められるべきなのはヒッポグリフの属性の王である俺なんじゃないんだろうか。未然に防げなかった。判断を誤って帰してしまった。

(俺が守らなきゃならなかったのに!!)

この世界に来て、まだ観光気分だった。

イチルと一緒に城を出た時、この世界で生きていく覚悟が出来たと思っていた。思い込んでいた。

だが、実際にはイチルに守られて、皆と笑いあいながら旅をして、この世界にきちんと向き合う覚悟なんて出来ていなかったんだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。