ヒッポグリフを追い越すのは簡単だ。
だが、追い越したところでどう奪い返す?
追いかけるだけで、俺もケルベロスもこれ以上の行動が取れない。ただ幸いなことに、ヒッポグリフは飛んでいるから何かあれば同じく空中にいる俺の方が早く対処出来る。
(でも、どうしよう…!)
考えのないまま飛ぶ。
そして、ふと前方に白い人影が見えた。
(ホーリエ!)
ホーリエがこちらを見る。夜だったからはっきりとは見えなかったんだろう。だが、猛スピードで向かってくる三体のうち、二体は黒色だということはきちんと認識したらしい。
氷の防御壁が形成される。敵が複数で急接近してくる場合、的を絞る攻撃魔法よりも自分の身を守る防御魔法を使うのが正解だ。
それは俺としても都合がよかった。
先頭を走るヒッポグリフは勢いを殺せていない。風でクッションを作り、ヨトを衝突の衝撃から守ればついにヒッポグリフは止まった。
僅差で走っていたケルベロスも急には止まれない。だが、クッションも必要ない。一人だけ氷の壁をすり抜けていった。…俺としてはそのまま走り去ってほしかった。
俺はなんとか止まる。
思わぬ足止めを食らったヒッポグリフは立ち往生している。そのうちケルベロスが氷の壁の向こうから戻ってきてしまった。
しかも、この時間ロスで後ろを走ってきていたイチルが追いついてしまった。
氷の壁、ケルベロス、ホーリエ、イチル、そして、先程は気付かなかったが、オーツェルドもいる。オーツェルドはリィシャを物陰に隠してから、鋭くその隻眼を細めた。
そして、イチルはヨトを銜えたヒッポグリフを睨んでいて、状況を確認したホーリエは静かに殺気を顕にしていた。
(うわ、最悪)
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。