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8.


ケルベロスが後ろからヒッポグリフに噛み付こうとしているところに、体当たりする。

ウェイトでは敵わないものの、スピードを上げればこの体でもなかなかの威力を出せるようだ。そして、何度目かの彼の舌打ち。

殺そうとして、妨害して、また殺そうとして。それを何度も繰り返した。

体当たりする度に傷は増えて下手をすれば地面を転がったし、ヒッポグリフが人を襲わないように壁を作りながらだったから、心身共に疲れきっている。だが、止まれない。

『邪魔をするな!』

『殺させないって言ってんだよ!!』

お互いに一歩も譲らない。譲れない。

分かったことはと言えば、ケルベロスは俺のスピードについてこれないから、体当たりは必ず成功する。距離がどれだけ空いていようと、飛びかかった瞬間に移動すれば余裕で間に合う。

埒が明かない消耗戦だ。ケルベロスが飛びかかれなくなるか、それとも俺が飛べなくなるか。

だが、事態はまさかの展開を迎えた。

『なっ、』

ヒッポグリフが急降下していく。

その先にいたのは金髪が特徴的な人物で、だが、ヒッポグリフの標的は彼ではなく彼が腕に抱えている小さな子供だった。突如降りてきた影にイチルが反応出来ていない一瞬の間に、嘴でヨトをくわえ、力任せに奪いさったのだ。

サファイアの目が丸まっていく。すぐさま追いかけようとするイチルに、頭の中に叫んだ。

────追いかけなくていい!俺が行く!!

────っ、はぁ!?タク!?

────相手はAランクの魔獣で、ケルベロスまでいる!あんたじゃどうにもならない!

俺が突然現れたことにか、今の姿にか、それともケルベロスという名前にか分からないが、イチルが息を呑んだ音が聞こえた。

だが、構っている暇はなくて、俺はヒッポグリフとケルベロスを見据えた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。